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たくさんの油くさいキャンバスの間、わんわん鳴くセミの日に、窓はずっしりと構えていた。
ぎゅうぎゅうと肩を押してくる蒸し暑い空気の中、まだ幼かった私たちはようやっと窓を引き出す。
ごてごてとうるさい装飾の付いた窓枠はたいへん重く、ごとんと自分一人で立っていられる窓である。
胸の高さまである窓の向こう側とこちら側に座り込んで、私と妹は鏡ごっこをする。
彼女が右手を振れば、私は左手をひらひらとしてやり、
私がおどけて左へのけぞれば、彼女は右へとよろめく。
ぼんやりとしたせまくうす暗い部屋へ、天窓からこがね色の陽が射していて、
そこらじゅう舞っているきらきらとしたごみが、いくつもの光の柱を作る。
ゆがんだガラスの向こう側の彼女は、まるであの胸をはやらせる夏休みの秘密のようで、
私は目が離せなく なる。
彼女の髪は細く、陽にあたるとはちみつにそっくりの色に生まれ変わる。
ふわふわとした眠気に襲われて、ガラスに額を預けて目を閉じると、
鼻先のガラス1枚を隔てた彼女は、古びたガラスがかびくさいねとくすくす笑う。
" ああ 彼女のように 笑わなくては "
――――唐突に胸のあたり、現実役の自分がつかえるようにしながら溢れ出してゆく。
ぼろぼろとこぼれていくのはきっと、ジャガイモの芽みたいな私の毒
窓枠にはめられたままのガラスは、もう立て付けがわるくて、たたくとばらばらと音がする。
私がガラスをたたくほど、向こう側から返ってくる
ばらばら ばらばら ばらばら
この乱暴な歌と一緒に忘れてしまわなきゃならない
彼女のうすい唇 私の名前をかたちどる
***
riri*
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