2010年5月8日土曜日

01:ヒツジ



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ねむれない夜に数える あの100匹のヒツジは
睡眠にまつわる あらゆることを知っているから、
こまったときには ヒツジを数える。

ヒツジのあのふわふわの中には、
まくらのいちばんベストなかたちも、
あたためたミルクに入れた角砂糖のかきまぜかた、
ちょうどよくおさまりのいいからだのまるめかた、
じょうずなふとんのしわのよせかた、
ひとりひとりにぴったりの こもりうた、
ヒツジはみんなじょうずに隠している。

夜が明けると、
100匹のヒツジは それぞれ大きなかさを開いて、
くものうえからさかさまに するすると降ろして、
かさこそとおしゃべりをつづける夢を すくっていく。
夢たちは かさに気づくと、 けらけら笑う。

ひょいとすくった ソレ を、
ヒツジたちはていねいに ガラガラにおさめる。
くすくす笑う声を聴きながら、
こわがらせないように ゆっくりゆっくりガラガラを回す。
からころところがる音がしなくなったら、
型に流して 180度で 焦げ目がつくまでじっくり焼く。
水分が多いとぺしゃんこになるけど、
ヒツジたちは、ナイフとフォークできれいに残さずたべる。

ごちそうさま、と言う。

ヒツジたちは、
何も言わずに 柵をとびこえて明日へゆく。
世界が眠りにつくその日も、
夢の中の待ち合わせスポットも、
会いたいひとの探し方も、
ぜんぶ知っていながら。

今日も夜が満ちて、 そして 夢がはじまる。

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riri*

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